始めに:首都圏・関東近県でも移住施策を重視する市町村がふえてきました

首都圏では、東京都心との距離が比較的近いということもあり、「移住」というよりは「リゾート利用」の方が需要が多いように映ります。

ただし、首都圏・その近郊 (関東近県) では、リゾート環境に恵まれ、しかも移住に適した居住環境 (自然環境・生活環境) を有したエリアが多くあります。さらには東京都心などからの交通アクセスが利便なことから、移住先エリアとしての注目度が年を追うごとに高くなっています。

そのため、移住先として検討される機会が増えるに伴い、「独自の移住施策」を実施する市町村が目立つようになっています。

そこで本サイトでも、それらの市町村別移住施策を随時取り上げていく予定です。

まずはその第1回目として、房総エリアでも人気の高い千葉県「いすみ市」のケースを取り上げました。

房総の人気移住エリア~千葉県「いすみ市」の移住施策

住みたい田舎~首都圏エリアで2年連続第1位の人気エリア

いすみ市は「住みたい田舎」ベストランキング首都圏エリア第1位に(いすみ市ホームページより)

いすみ市は「住みたい田舎」ベストランキング首都圏エリア第1位に (いすみ市ホームページより)

「田舎暮らしの本」2018年2月号/「2018年度版住みたい田舎ベストランキング」 (宝島社発行) において、千葉県いすみ市は、首都圏エリアで、若者世代部門、子育て世代部門、シニア世代部門すべての部門で1位となり、2年連続で首都圏エリア第1位となりました。

移住や田舎暮らし、あるいはリゾート用別荘利用などを検討する際の移住先候補として、房総半島外房エリアに位置するいすみ市の気候・自然風土、暮らしやすい居住環境などが注目される機会がふえているようです。

そうした背景をもとに、主にリゾート地に位置する市町村別の移住施策の第1回目として、いすみ市の各種施策を具体的に紹介いたします。同市でも移住・定住関連の施策に力を入れて取り組んでおり、物件の購入や賃借により、同市での定住を検討なさる方の参考事例もふえています。

いすみ市全体で移住・定住関連の施策の重要度が高まっています

1. 注目される市の「定住促進プラン」

いすみ市に移住・定住した人々のプロフィール

いすみ市に移住・定住した人々のプロフィール (暮らし情報ポータルサイト「いすみ暮らし」より)

いすみ市の「定住促進プラン」の目的と趣旨は、同プランの中で次のように提起されています。

『いすみ市は、平成17年12月に旧夷隅町・旧大原町、旧岬町の3町が合併し誕生しましたが、合併前より人口の減少が続いており、今後も減少の傾向が続いていくことが予測されます。

人口の流出・減少により、市民の活力やコミュニティの存続、地域経済や市の財政基盤等への影響が懸念されており、人口の減少に歯止めをかけるための施策やその取り組みが急務となっています。

そこで、責任ある実行体制を確立するとともに、施策を体系的に展開するための基本的指針として、『いすみ市定住促進プラン』を策定しました。

このプランでは、市民と連携・協働しながら、定住促進に向けた施策を総合的かつ、戦略的に展開し、市民はもとより、市外の人々も惹きつける魅力的なまちづくりを展開していくことを目的としています。』

その具体的な都市計画の重要な方向の1つとして、“移住しやすいまちづくり” が掲げられています。

『豊かな自然や温暖な気候、伝統文化や生活関連情報など、いすみ市の情報を積極的に発信するともに、地域のホスピタリティ向上や移住相談体制の整備など、移住しやすいまちづくりを進めます。』

この考え方をもとに、同市では、以下のように種々の移住・定住関連施策が積極的に進められています。

■いすみ市の「定住促進プラン」における事業と取り組み
担当課 事業及び取り組み 概要
企画政策課 移住希望者支援事業 いすみ市へ移住・定住を希望する方の相談窓口「いすみ暮らしサロン」を開設し、様々な相談に対応します。
企画政策課 いすみ市定住促進協議会 官民連携で組織された「いすみ市定住促進協議会」において、様々な移住・定住施策について調査、研究し事業を実施します。
企画政策課 いすみ暮らし情報サイト 地域のイメージの向上や不動産、病院など移住希望者の求める情報を発信します。
企画政策課 空き家情報登録制度 市内の空き家に関する情報を提供することによって空き家の有効活用を図り、定住促進と地域の活性化を推進します。
企画政策課 空き家バンク制度 空き家の有効利用を通して、移住・定住・二地域居住を促進し、地域の活性化を図ることを目的に、空き家情報の提供を行います。
企画政策課 移住者向け農業講座 いすみ市での定住及び地域交流の促進を図るため、いすみ市に移住した方を対象に農業講座を実施します。
都市整備課 定住促進住宅取得奨励 市外から転入し定住される方への新築住宅取得並びに新築住宅取得に供する土地取得に助成します。

▲上記表のお問い合わせ先: いすみ市役所 企画政策課/ TEL. 0470-62-1382

2.『いすみ暮らしサロン』の開設

いすみ市では、移住相談案内所 「いすみ暮らしサロン」 を設置しており、“移住に関する相談 承ります!” と掲げ、移住希望者が気軽に各種相談を行える「移住萬 (よろず) 相談所」として注目されるようにになっています。

いすみ暮らしサロン全景 (hinode)

いすみ暮らしサロン全景 (hinode)

暮らしサロン内の談話室

暮らしサロン内の談話室

たとえば相談窓口では…
「田舎に住んでみたいけど、どうやって住むところを探そうか?」
「地域になじめるか心配…」
と言った様々な相談にも応じてくれます。

hinodeのロゴマーク

hinodeのロゴマーク

いざ新しい場所で生活を始めるというのは、とても勇気のいることです。そのため、いすみ市では、田舎暮らしを始めようとするみなさんのお手伝いをするため、サロンを通じて市民と市役所職員がペアになり、様々な相談に対応しています。

この暮らしサロンは、市民や民間企業、千葉県やいすみ市が連携して設置した「いすみ市定住促進協議会」(→次項3を参照) が運営しており、近年の移住・定住への関心の高まりとともに、いすみ市への移住に関する相談風景が日常的に見られるようになっています (※2017年7月2日より、いすみ暮らしサロンの開催場所がいすみ市役所岬庁舎から、hinodeに変更となっています)。

また、移住を希望されている方はもちろん、既に移住された方に対しても、気軽に問い合わせや相談に乗ってもらえるだけでなく、移住者や移住希望者の情報交換や交流の場として活用してもらえる態勢も整っています。

■「いすみ暮らしサロン」の概要
受付日 日曜のみ(祝祭日、年末・年始を除く)
受付時間 9:30~14:30
所在地 hinode (いすみ市大原のコワーキングコミュニティ/
千葉県いすみ市深堀1712-1 サンライズガーデン内)
電話番号 0470-64-6757
E-mail uji@city.isumi.lg.jp

※なお、平日は、いすみ市役所水産商工課「移住・創業支援室」 (TEL. 0470-62-1332) まで、
直接お問い合わせください。

3. いすみ市定住促進協議会の活動推進

いすみ市への移住・定住を促進するため、「定住促進協議会」は様々な事業を積極的に推進しています。

■定住促進協議会の概要
●名称 いすみ市定住促進協議会
●会長 出口 幸弘 (いすみ市商工会顧問)
●所在地 千葉県いすみ市大原7400番地1 (いすみ市役所水産商工課内)
●設立 平成21 (2009) 年7月2日
●目的 田舎暮らしを希望する都市生活者等がいすみ市へ定住もしくは二地域居住するために必要な情報提供、支援及び情報発信等に関する諸事業を行い、いすみ市への定住及び二地域居住の促進を図ることにより、産業経済や文化など地域の活性化の推進に寄与することを目的とする。
●構成 市民、NPO、商工会、企業、学識経験者、県、市等

4. 住まいに関する市の対応

いすみ市では、市内に転入・居住する方たちに向け、民間アパートをはじめ、畑付き古民家、サーファー向け物件、ワンルームタイプのアパートなど、ライフスタイルに合わせた物件が様々にあります。もちろん、同市への移住・田舎暮らしを検討なさる方に対しても、戸建て、マンション、土地などの物件種類ごとに対応物件数が増えています。

また市営住宅など公営住宅も供給されていますが、入居には条件がありますので、詳細については市の下記担当課にお問い合わせください。

▲いすみ市の「住まい」に関するお問い合わせ先: 都市整備課/ TEL. 0470-62-1204

5. 空き家バンク紹介システムによる移住・定住の促進

いすみ市では、市内に点在する空き家物件を一軒でも多く、移住希望者等に活用してもらうことで移住・定住の促進を図り、地域の活性化につなげたいとの考え方から、市独自の『空き家バンク』システムを実施しています。

いすみ市「空き家バンク」のイメージ

いすみ市「空き家バンク」のイメージ (暮らし情報ポータルサイト「いすみ暮らし」より)

いすみ市「空き家バンク」のしくみ

いすみ市「空き家バンク」のしくみ

●「空き家バンク」システムのしくみ

現在、居住していない戸建て住宅をいすみ市内に所有し、賃貸物件として提供してくれる方から登録された空き家の貸出し情報を、ウェブサイト上で公開します。

それとともに、市内へ移住・定住等を目的として空き家の利用を希望する方に対して紹介を行う “マッチングシステム” としていすみ市が実施しているものです。

[いすみ市情報ポータルサイト「いすみ暮らし」より]

◆空き家バンクご利用上の注意事項:
なお、この制度における「空き家」とは、「個人が居住を目的として建築 (購入) し、現に居住していない住宅・居宅・建物及びその敷地のこと」をいいます (賃貸等を目的として建てた物件は対象外となります)。
いすみ市では、空き家所有者と空き家利用者とのマッチングまでを行い、空き家に関する賃貸借等の交渉・契約については、直接に関与はしません。
空き家所有者との賃貸借契約については、市に代わって、市と協定を交わしている市内不動産事業者の仲介のもとに契約するしくみとなっています。


▲いすみ市「空き家バンク」のお問い合わせ先
【いすみ市水産商工課】:いすみ市大原7400-1(大原庁舎)/ TEL. 0470-62-1332
【いすみ暮らしサロン】:いすみ市深堀1712-1 サンライズガーデン (hinode) / TEL. 0470-64-6757

6. いすみ市の創業支援施策

いすみ市では、市内で創業された方に対し、創業支援にかかる下記のような様々な補助金を交付しています。詳しくは各補助金等の詳細をご覧いただくとともにお問い合わせください。

◎いすみ市空き店舗対策事業補助金
・市内の空き店舗を活用し商業の振興、活力と魅力ある地域づくりを推進する方の支援
・改装工事:上限額80万円、賃借料:上限月10万円(賃借料については3年間補助しますが、段階的に補助率が変更になります)
※なお、空き店舗の賃借又は購入前に市へ事業相談をすることが条件となります。
◎いすみ市シェアハウス等設立事業補助金
・空き家の有効活用を促進するため、空き家を改修してシェアハウスやゲストハウスを設立する方の支援
・上限額250万円(平成28年度2件採択済・平成29年度1件採択済)
◎いすみ市創業者空き家活用事業補助金
・空き家の有効活用を促進するため、空き家を改修して創業する方の支援
・上限額250万円
◎いすみ市クラウドファンディング活用支援事業補助金
・クラウドファンディング(投資型)を活用して資金を調達し、新たな事業を実施する方の支援
・上限額100万円(匿名組合契約にかかる補助)
◎いすみ市クラウドファンディング利用手数料助成事業
・クラウドファンディング(寄付及び購入型)を活用して資金を調達し、新たな事業を実施する方の支援
・上限額50万円(利用手数料の助成)
※クラウドファンディング企画の実施前に市への事業相談をすることが条件となります。
◎いすみ市創業支援資金利子補給金交付事業
・創業時の負担軽減と経営の安定化を図るため、創業に必要な資金の融資を受けた方の支援
・上限額年20万円(利子として支払われた額の補助)
◎いすみ市創業支援事業補助金
・新たな事業の創出の促進及び地域経済の活性化を図るため、市内で創業する方及び創業した方(3年以内)の支援
・上限額20万円(設備費、備品、ホームページ作成等経費の補助)

▲創業支援施策のお問い合わせ先:水産商工課 移住・創業支援室/ TEL. 0470-62-1332

7. 移住希望者向け「移住ガイドブック」の発行

いすみ市 「移住ガイドブック」 の表紙

いすみ市 「移住ガイドブック」 の表紙

これまで見てきたように、いすみ市では人口減少対策として、様々な移住促進策に取り組んでいます。

その一貫として、移住を考えている方に「いすみ市」について知ってもらおうと、これまでのガイドブックを改訂し、“移住 (いすみ) しませんか” のキャッチフレーズのもと、「移住ガイドブック」を発行しています。

田舎暮らしを始めるには、疑問や不安はつきものです。そうした疑問や不安を少しでも解消していただきたいと、このガイドブックには、先輩移住者の移住体験談や地元住民の声、市の支援策や生活環境マップなどを掲載しています。

※関心のある方は、下のPDFファイルをダウンロードしてご覧ください。↓

PDFアイコンいすみ市の「移住ガイドブック」
“移住(いすみ)しませんか”

●本記事の出典について:
本記事の文章・画像は以下のサイトより抜粋・一部修正して掲載させて頂いています。記事の内容詳細については、直接各サイトをご覧ください。

(1) いすみ市公式ホームページ
(2) いすみ市暮らしの情報ポータルサイト「いすみ暮らし」